もうひとつの季節


もうひとつの季節 (中公文庫)

もうひとつの季節 (中公文庫)



とみにはまっている保坂和志、『季節の記憶』の続編を読む。
鎌倉で二人暮らしの父と幼い息子の生活を、近所に住む便利屋の兄妹を交えながら描いている。今回は猫の茶々丸さんが登場し、より幸せ感UP!
前作より完成度が高いと定評のある(著者本人もこっちのほうが小説として面白いと発言している)本作。
私はいつものようにぼーっと読んでいたのですが、
最後のほうでびっくりしました。
いや、内容は記しませんが、とにかく、びっくり。
なにせ、ストーリーというものがないこの作品に、初めて、話の「波」が描かれているからです。ひとつも波がないと思って読んでいたのに! 波あったよ!

ふつうのエンタメ作品なら、波の数なんて一冊のうち十個や二十個ありそうなものですが(いや、何個かはよくわかりませんが……)
たったひとつの波が、これほどの衝撃だとは。
すごい。
私は読み終えたあと、虚を突かれたように、電車のなかでボーゼンとしてしまいました。


(あ、でも私は『季節の記憶』のほうが好きです。)